プレファブコートD.I.S Prefab coat D.I.S
2005
哲学者・信原幸弘氏と対話を重ね「傷ついた心に必要なものは何か」を考え、形態を導き出したプレファブコート。
「傷ついた心の歪みを認識し、活き活きとした心を取り戻す」というコンセプトからさまざまな着方が可能な衣服が完成。
この作品は、平面状にすると、菱形をしており、その菱形の生地か
ら衿にもなる袖口がランダムな場所に多数つけてあり、多様な方法
で着用することができる。つまり各人にとって着心地のよい着方を
することができるのである。初めから歪んだ衣服を自分風に着るこ
と、着心地のよい着方を何度も探りながら着用を試みることで、歪
みというマイナスのイメージが、次第に、「生地が歪んでいることの
面白さ」や、「歪んでいることで始まる自分のアイディアとの交差」
へと興味が拡大されてゆき、歪みへの再認識を得ていく。それは、
それまで抱いていた歪みというマイナスイメージへの再認識、意識
の変化となり、心の歪みをも肯定的に受け入れ、誘引する手掛りと
なる。そして、次第に外からの衝撃でできた心の歪みを解消する方
向に導いてゆく。さらに、菱形の布には、四方周囲にファスナーが
つけられており、これを交互に閉めることで、意外な形で歪みが解
消されることにもなる。これらを通して、私は、歪んだ形態のプレファ
ブ・コートを媒体として、各自が自分にとって着心地がよく、心が
安定する着用方法を探してゆくことで、歪みによって生まれた傷が
解消されることを願い、実験的な衣服の制作を試みる。
アクシスギャラリー(東京)/ 眞田岳彦「プレファブ・コート」展、他